売却 vs 賃貸:どっちが得か?収支シミュ付き
住み替えやライフプランの変化で家を手放すとき、選択肢は「売却」だけではありません。 「賃貸に出して家賃収入を得る」という選択肢もあります。本記事では、首都圏マンションを例に、 売却益と10年間の賃貸経営シミュレーションを比較し、どちらが得かの判断軸を整理します。
判断の出発点:表面利回りではなく実質利回り
賃貸経営の収益性を測る指標として「利回り」がよく使われますが、注意が必要なのは 表面利回り(家賃収入÷物件価格)ではなく実質利回りで判断すること。
- 表面利回り:家賃 × 12ヶ月 ÷ 物件価格
- 実質利回り:(家賃 × 12ヶ月 − 諸経費)÷ 物件価格
諸経費には、管理委託費・修繕積立金・固定資産税・空室リスク・原状回復費・賃貸管理手数料などが含まれます。 これらを差し引いた実質利回りが4%以上あれば、賃貸検討の余地があります。
シミュ条件:首都圏築20年マンション
- 物件:3LDK・首都圏駅徒歩10分
- 売却見込価格:4,500万円
- ローン残債:2,000万円(月返済 約9.5万円)
- 想定家賃:15万円/月
- 所有期間:20年(長期譲渡・3,000万円特別控除適用可)
パターンA:今すぐ売却
売却代金 4,500万円 から残債2,000万円を返済し、諸費用(仲介手数料・印紙税等)を差し引いた手取りは:
- 売却代金:4,500万円
- ローン残債返済:−2,000万円
- 仲介手数料(3%+6万+税):約 −155万円
- その他諸費用:約 −20万円
- 譲渡所得税:3,000万円特別控除で0円
- 手取り:約 2,325万円
パターンB:賃貸に出して10年保有
10年間の月次収支は次のとおり:
- 想定家賃:+150,000円
- 空室リスク(85%稼働想定):実効収入 +127,500円
- 管理委託費(家賃の5%):−7,500円
- 修繕積立・管理費:−25,000円
- 固定資産税(月割):−10,000円
- ローン返済:−95,000円
- 月次手取り:−10,000円(持ち出し)
月1万円の持ち出しが10年で−120万円。 一方、10年でローン残債が約1,200万円に減少(月約9.5万円のうち元本部分)。 10年後の物件価値は築30年で新築比40〜50%、約2,500〜3,000万円程度に下落想定。
10年後に売却する場合の手取り試算:
- 売却代金:2,800万円(築30年想定)
- ローン残債:−800万円
- 仲介手数料:約 −95万円
- 譲渡所得税:賃貸転用していたため3,000万円特別控除は対象外(要件確認)
- 10年間の累積持ち出し:−120万円
- 10年後の手取り:約 1,785万円(パターンAより約540万円少ない)
シミュ結論:このケースでは売却が約540万円有利
上記シミュレーションでは、今すぐ売却する方が10年後の賃貸経営より約540万円有利という結果。 特に3,000万円特別控除が使える「住まなくなって3年以内」の期間に売却する判断が、節税効果も大きく合理的です。
ただし、以下のケースは賃貸が有利になる可能性があります:
- 都心立地で家賃が25万円以上取れる物件
- 残債がすでに完済済み(実質利回りが大幅改善)
- 将来的に自分で住み戻す予定がある
- 子に相続させる予定で長期保有が前提
判断には個別シミュが必須
上記はあくまで一例。物件の立地・築年数・残債・税制要件は人それぞれで、 「売却 vs 賃貸」の判断は個別具体的なシミュレーションでしか答えが出ません。 売却検討中なら相場査定、賃貸検討中なら管理会社による家賃査定が、それぞれ意思決定の出発点になります。
売却 vs 賃貸の比較は、まず正確な売却見込価格を知るところから始まります。
想定家賃と管理プランは複数社で比較するのが鉄則。空室リスクを織り込んだ実質利回りで判断しましょう。
まとめ
「売却 vs 賃貸」の判断は、感覚ではなく数字で決めるべき意思決定です。 住宅ローン残債・想定家賃・3,000万円特別控除の適用可否・将来の物件価値推移を全て織り込んで、 10年後・20年後の手取りベースで比較すると、合理的な判断ができます。